ココアの価格が3年間で2倍以上に高騰し、チョコレートが高価なものとなっています。甘いもの好きには厳しい状況です。異常気象、作物の病害、コモディティ(商品)への投機による、こうした価格高騰を受け、チョコレートメーカーは代替品を模索するようになっています。チョコレートメーカーが求めているものは、まもなくスイスで見つかるかもしれません。それは丘の中腹の農園で育つのではなく、チューリッヒ湖畔にある元工場施設に設置された、バイオリアクタの中で育ちます。
カカオ植物に代わる細胞培養
「その工程は、ビール造りに少し似ています」と、共同創業者兼最高生産責任者のKlaus Kienle氏は説明します。「カカオ豆から優良な細胞を選び、液体培地で培養してから、最終的に生のココアを収穫するのです。」焙煎後、ココアパウダーは粉砕したカカオ豆と同じように加工することができます。コーヒー、ナッツ、ベリー類も同様の方法で生産可能ですが、Food Brewer社では今のところココアに注力しています。
デリケートな細胞のための堅牢なセンサシステム
カカオ細胞が効率よく増殖するためには、つねに栄養分と酸素が供給される環境が必要です。Food Brewer社では、ビール醸造設備サプライヤーから調達したファーメンタでカカオ細胞を培養しています。これは半継続的なプロセスで、数日おきに、カカオを収穫するために培養液の一部を抜き取り、代わりに新鮮な栄養液をファーメンタに補充します。
Food Brewer社では、このパイロットスケールのファーメンタにおいてEndress+Hauserの計装機器を使用し、液位、温度、pH、溶存酸素濃度、流量を測定しています。Kienle氏は説明します。「Endress+Hauserを選んだのは、同社が食品産業で豊富なノウハウを持っているからです。堅牢で、耐久性に優れ、操作も容易な、ちょうどぴったりな製品を提供してくれました。」IO-LinkとPROFINETによるデジタル通信のおかげで、このシステムは機器の状態を継続的に可視化し、正確な測定値を提供します。「私たちはプロセスに自信を持っており、どこからでもそれを監視することができます」とKienle氏は言います。
工業化のパートナー
Endress+Hauserで食品産業担当の戦略的アカウントマネジメント責任者を務めるJochen Kötzleは、「Food Brewer社が開発した革新的なバイオプロセス技術は、持続可能な食料生産の未来を担う可能性を秘めています」と言います。Kötzleは、Endress+Hauserが機器サプライヤーとエンドユーザーの双方と築いている緊密な協力関係を重視しています。「こうした人々と関わると、市場の動向や、顧客が必要としつつあるものが見えてきます。」たとえば、Endress+Hauserの製品ラインナップには、イーサネットベースのデータ通信ソリューションがすでに含まれており、品質パラメータのリアルタイムなインプロセス測定が可能となっています。「こうした協働的なアプローチにより、製品を継続的に開発し、将来にわたる競争力を確保することができます」とKötzleは言います。
現在、Food Brewer社のココアマスの生産能力は6,000リットル強ですが、Klaus Kienle氏は10万リットル以上を目指しています。細胞培養によるカカオ生産を商業的に実現可能にするためには、こうした規模の拡大が不可欠なのです。Kienle氏は言います。「私たちは手頃な価格のものを大量に生産したいと考えています。そのためには、堅牢で高性能なシステムが必要です。Endress+Hauserのようなパートナーは、食品産業におけるこうしたスケールアッププロジェクトに必要な、未来志向の姿勢を持っています。」
すぐ隣で作られたカカオ
Food Brewer社は、生産拡大に加え、米国での市場認可の取得も進めています。Kienle氏は、食品産業で細胞培養ココアが広く採用されたとしても、それが巨大工場の建設につながる可能性は低いと考えています。そうではなく、チョコレート工場の近くに分散型の生産工場を設置する形になると考えています。このモデルは、チョコレートのサプライチェーンに革命をもたらすでしょう。チョコレート製造業者は、しばしば問題のある状況下で生産される熱帯産の原料から、輸送を最小限に抑えながら現地で付加価値を生み出す持続可能な製品へと切り替えることが可能になります。たとえば、Food Brewer社は、Lindt & Sprüngliの本社からわずか10キロメートルほどの場所にあります。実は、この世界的に有名なスイスのチョコレートメーカーは、すでにこのスタートアップ企業の出資者となっています。