超音波流量計の測定原理
超音波流量測定で用いられる、伝搬時間差法、ドップラ法、相互相関法の原理と特長について説明します。
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03.12.2024
要約
伝搬時間差法:流れ方向と逆方向に伝わる超音波パルスの伝搬時間差を利用して流量を測定します。伝搬時間の差は流速に比例します。 ドップラ法:ドップラ効果を利用し、流体中の粒子や気泡で反射した音波の周波数変化を検出して流量を測定します。 相互相関法:流れの中で発生する乱れや流速分布パターンが、2点間を移動する時間を利用して流量を測定します。この測定法は、高流速条件や、粒子や気泡を含む流体に適しています。
この測定法は、液体および気体の測定に使用されます。流体中を伝わる音波の速度が、流体の流速によって変化するという性質を利用した測定法です。たとえば、流れに逆らって泳ぐ場合は、流れに沿って泳ぐ場合よりも、多くの時間と力が必要になります。伝搬時間差を利用した超音波流量測定は、このシンプルな物理現象に基づいています(図1参照)。
この測定法では、センサをペアで使用します。1組以上のセンサペアを配管に取り付け、超音波パルスを交互に送受信します(下図では信号 t1 およびt2 で示されています)。流体が流れていない状態では、信号 t1 とt2 の伝搬時間はほぼ同じで、伝搬時間差は発生しません。一方、流体が流れている場合は、超音波信号が流れ方向へ進む場合と逆方向へ進む場合で、到達時間に差が生じます。その結果として、伝搬時間差が発生します(t2 –t1 )。2つのセンサ間の距離が分かっていれば、この伝搬時間差が流速に比例しているので、流量を算出できます。両方のセンサは変換器に接続されており、変換器はセンサを励振して超音波を発生させるとともに、一方のセンサからもう一方のセンサへ伝搬する超音波の伝搬時間を測定します。
Q:流量 K:定数(音響経路長、動径方向/軸方向のセンサ距離比、速度分布(流速プロファイル)、断面積などに依存) t1 :伝搬時間 t1 (流れ方向) t2 :伝搬時間 t2 (流れに逆らう方向)
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図1:伝搬時間差法による超音波流量測定。音波の伝搬速度は、流体の流速と流れ方向によって変化します。
ドップラ流量計は、ドップラ効果(ドップラシフトとも呼ばれます)を利用して流量を測定します。この物理現象は、私たちの日常生活でも身近なものです。動く物体から反射される音などで起こる現象です。たとえば、救急車のサイレンの音の周波数は、通過した後は低く聞こえます。これは、音源や反射体と観測側との距離が変化することで、受信される音波の周波数がドップラシフトにより変化するためです。
ドップラ流量計は、流体中に粒子や気泡など、超音波を反射する対象が含まれている場合にのみ機能します。ドップラ法では、1つのセンサが送信器と受信器の両方の役割を果たします(図2)。
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図2:ドップラ効果を利用した超音波流量測定。送信された超音波(f1 )と反射された超音波(f2 )の周波数は、流体中を移動する粒子や気泡の流速によって変化します。
ドップラ法や伝搬時間差法に加えて、相互相関法による流量測定も利用されています。この測定法では、ある測定点で検出された流れの乱れや流速分布パターンが、次の測定点まで移動する時間(伝搬時間)を利用して流量を測定します。2つの測定点間の距離(Δx)が分かっているため、測定された移動時間から、流速や体積流量を算出できます。
相互相関法は、非常に高い流速条件や、気泡・粒子を多く含む流体の測定に適しています。一方で、乱れやパターンを比較して解析するためには、多数の演算処理が必要となるため、高度な信号処理技術と高性能なハードウェアが求められます。
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図3:相互相関法を利用した超音波流量測定機器。
配管内面に導電性の付着物がある場合、測定にはどのような影響がありますか?
流体の流速(V)を測定するすべての測定法では、配管断面積(A)が狭くなることで、体積流量(Qv)の計算に誤差が生じます。また、センサ表面に付着物が多く堆積すると、出力信号が減衰する場合があります。
Qv = A · V
流体中の気体や固形分は、伝搬時間測定にどのような影響を与えますか?
固形分や気体は、超音波信号を減衰・散乱させる要因となります。そのため、その含有率が高い場合には、測定が難しくなることがあります。ただし、測定への影響は、気泡や粒子の含有量だけで決まるわけではありません。気泡や粒子の大きさ、さらに流体中での分布状態も、測定の可否に大きく影響します。このような場合には、「acceptance rate」(許容レート・受信率)と呼ばれる診断パラメータを用いて信号状態を監視します。
特に、下水や紙パルプで見られる繊維状固形物は、測定に大きな影響を与える可能性があります。一方で、細かな砂状粒子は、比較的に影響が小さい傾向があります。最終的には、実際のプロセス条件下で試験測定を行うことで、測定可能かどうかを確認できます。
指定された上流側/下流側直管長が確保されていない場合、どのような影響がありますか?
継手やベンドの下流側では、流速分布が十分に整っていない場合があります。このような状態では、測定原理やセンサ配置によって、さまざまな大きさの測定誤差が発生する可能性があります。特に、複数のベンド後に発生する旋回流や偏った流速分布は、測定に影響を与える場合があります。このような条件では、シングルパス流量計よりもマルチパスシステムの流量計のほうが有利です。特にクランプオン方式では、流れの阻害要因によっては、15 × DN以上の上流側直管長が必要になる場合があります。
一方で、近年では、短い直管長条件でも流れの外乱を補正できる技術が登場しています。Endress+HauserのFlow Disturbance Compensation(FlowDC)は、流れの状態に応じて流速分布を補正する技術です。2組のセンサを用いることで、上流側/下流側直管長がそれぞれわずか2 × DNの場合でも、仕様範囲内での測定を実現します。この技術は、1つの測定点で2つの測定パスを使用するクランプオン方式のセンサ製品に採用されています。
超音波測定は流体密度の影響を受けますか?
いいえ。超音波流量計は、流体密度の影響を受けずに測定できます。超音波測定で重要となるのは音速であり、この値は常時測定されています。密度値は、体積流量から質量流量を算出する際にのみ使用されます。
超音波測定は流体温度の影響を受けますか?
流体温度が変化すると、音波の伝搬速度もそれに応じて変化します。ただし、伝搬時間差法の超音波流量計では、流れ方向と流れに逆らう方向の両方で測定を行うことで、この影響を補正しています。
伝搬時間差法とドップラ法にはどのような違いがありますか?
伝搬時間差法は、清浄な流体を高精度に測定する用途に適しています。この測定法では、流体中に粒子や気泡が含まれている必要はありません。一方、ドップラ法は、伝搬時間差法では測定が難しい、気体や固形分を多く含む流体の測定に適しています。流速は、送信された信号と反射信号との周波数差を測定することで求められます。
流速分布は測定にどのような影響を与えますか?
流速分布は、超音波流量測定において非常に重要な要素です。超音波流量計は通常、超音波ビーム経路に沿った1本の測定経路上で流速を測定するためです。一部の測定システムでは、この影響を低減または補正するために、2つ以上の超音波測定パスを使用しています(図4)。
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図4:シングルパスシステム(a)とデュアルパスシステム(b)による超音波測定。
F
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