コリオリ流量計の測定原理
コリオリ質量流量計の原理、用途、および特長について詳しく解説
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複数の業界
03.12.2024
要約
コリオリ質量流量計は、化学業界や食品・飲料業界をはじめとする幅広い分野で使用されています。これらの分野では、物理条件の変化による影響を受けにくいことから、体積流量ではなく質量流量の測定が重視されます。これは、特に高精度な計量取引において重要な要件となります。 フランスの物理学者ガスパール=ギュスターヴ・ド・コリオリにちなんで名付けられたコリオリ原理は、コリオリ力を利用して質量流量を直接測定します。この力は回転運動する系で発生し、振動している測定管にねじれを生じさせます。このねじれを検出することで、質量流量を高精度に測定できます。 コリオリ質量流量計は、多様な構造と口径のラインアップを備えており、幅広いアプリケーションに対応します。質量流量に加えて、密度や温度も同時に測定可能なため、医薬品製造における微量注入から船舶への積み込み・荷揚げまで、さまざまな用途で活用されています。また、洗浄性に優れ、圧力損失が小さく、高い測定精度を実現できることも大きな特長です。 優れた測定精度を誇るコリオリ質量流量計は、計量取引用途に最適なソリューションです。
多くの産業分野では、体積流量ではなく質量流量の測定が求められます。例えば食品業界では、ペースト状製品、果肉製品、ヨーグルトなどは一般的に体積ではなく重量によって計量・充填されます。そのため、製品パッケージには内容量として体積ではなく重量が表示されています。その理由の一つは、多くの流体の体積が圧力、温度、密度などの物理条件によって大きく変化するためです。一方、流体の質量はこれらの影響を受けません。このため、質量流量測定には、体積流量測定では得られない利点があります。特に、液体の計量や計量取引においては重要な特性です。
一般に物体の質量は秤量によって求められます。しかし、配管内を連続的に流れる流体の質量を直接計量することは、技術的に多くの課題を伴います。この課題を解決するために近年広く採用されているのが、配管内を流れる流体の質量流量を直接かつ連続的に測定できるコリオリ測定原理です。アプリケーションによっては、体積流量と密度を測定して質量を算出する方法(質量=体積×密度)よりも、コリオリ原理を用いて質量流量を直接測定する方が適している場合があります。
この測定原理は、その名の由来となったフランスの物理学者・数学者、ガスパール=ギュスターヴ・ド・コリオリ(1792~1843年)によって初めて体系的に説明されたとされています。
コリオリ効果は回転運動する系においてのみ発生する現象です。例えば遊園地の回転遊具や地球の自転などで観察されますが、遠心力とは異なる現象です。「コリオリ力」という言葉は広く知られていますが、その働きを直感的に理解することは容易ではありません。コリオリ力は、直線運動と回転運動が同時に存在する場合に発生します。
図1にその例を示します。回転する円盤上で静止している人は、遠心力に対抗するためにわずかに内側へ身体を傾けるだけで済みます(図1左)。一方、その人が回転中心から外周へ向かって移動すると、回転速度は徐々に大きくなります。さらに慣性の影響が加わることで、コリオリ力と呼ばれる力が発生します。このコリオリ力により、人は円盤上の最短経路(半径方向の直線)から逸れる方向へ力を受けます。 また、質量が大きいほど、 回転速度が速いほど、 外周方向への移動速度(質量流量に相当)が速いほど、 慣性の影響は大きくなり、コリオリ力も強くなります。
数学的には、コリオリ力(Fc)は移動する質量(m)、回転系の角速度(ω)、および半径方向速度(vr)に比例します。
Fc = 2 ⋅ m ⋅ ω ⋅ vr
©Endress+Hauser
図1:回転円盤上で発生するコリオリ力とその作用
コリオリ力は、直線運動と回転運動が重なる場合にのみ発生します(図1右)。直線運動が存在しない場合(図1左)には、遠心力のみが作用し、コリオリ力は発生しません。
コリオリ質量流量計 (図2)では、流体を構成する質量粒子が、前述の回転円盤上の人と同様の影響を受けます。流量計では、コリオリ力を生み出す回転運動の代わりに、測定管を共振周波数で振動させています。
©Endress+Hauser
図2:コリオリ測定原理(詳細な説明は図3を参照)
a:ゼロ流量時の測定管の振動状態 b:流量がある場合の時点1における測定管の振動状態 c:流量がある場合の時点2における測定管の振動状態
流体が静止しているゼロ流量時には直線運動が存在しないため(a)、コリオリ力は発生しません。 流体が流れ始めると、測定管の振動運動と流体の直線運動が重なり合い、コリオリ力が発生します。その結果、測定管にはねじれ変形が生じます(b、c)。 入口側と出口側に設置されたセンサ(A、B)は、このねじれ運動に生じる時間差、すなわち位相差を検出します。質量流量が大きいほど、位相差も大きくなります(図3)。
©Endress+Hauser
図3:測定管内におけるコリオリ力と振動形状
流体が流れると、質量粒子は測定管内を移動しながらコリオリ力(Fc)による横方向の加速度を受けます。質量粒子(m)は、測定管入口側では回転中心(Z1)から離れる方向へ移動し、出口側に近づくにつれて回転中心(Z2)へ戻る方向へ移動します。 その結果、入口側と出口側で互いに逆向きのコリオリ力が発生し、測定管にねじれが生じます。この振動形状の変化は、測定管両端のセンサ(A、B)によって位相差として検出されます。 この位相差(Δφ)は、流体の質量および流速(v)に直接比例するため、質量流量にも直接比例します。
現在、コリオリ質量流量計はDN 1~300までの幅広い口径レンジに対応しています。そのため、医薬品製造における微量注入から船舶貨物の積み込み・荷揚げまで、幅広いアプリケーションで使用されています。また、それぞれの用途に最適な多様なセンサ設計が提供されています。
測定管は常にその共振周波数で振動しています。流体の密度が変化すると、振動系全体(測定管と流体)の質量も変化するため、励振周波数はそれに応じて変化します。 このため、共振周波数は流体密度に依存しており、その変化を利用して密度を測定できます。したがって、密度は質量流量に加え、追加の測定値として出力することが可能です。
測定管の温度は、温度変化による影響を補正するために常時監視されています。この温度信号は補正演算に使用されるだけでなく、プロセス温度として出力することも可能です。
コリオリ質量流量計には、単一測定管方式、2測定管方式、4測定管方式など、さまざまな構造があります。また、測定管の形状や曲率も用途に応じて設計されており、幅広い産業アプリケーションに対応します。
多くの2測定管方式のコリオリ流量計では、2本の測定管を逆位相で振動させています。この構造により、外部振動の影響を効果的に低減し、流量計全体を周囲環境から切り離すことができます。 2測定管方式にはさまざまな設計があります。測定管の形状はメーカーによって異なり、直管形状、ループ形状、緩やかに湾曲した形状などが採用されています。 Endress+Hauserでは、直管または緩やかに湾曲した測定管を採用することで、コンパクトで省スペースなセンサ設計を実現しています。
単一測定管方式のコリオリ質量流量計には、2測定管方式と比較して次のようなメリットがあります。
洗浄が容易 圧力損失が大幅に低い 流体を2本の測定管へ分流するためのスプリッタが不要なため、流体への負荷が小さい
一方で、この構造では振動する測定管が1本しかないため、2測定管方式で得られる外部振動からの機械的分離効果を自然に実現することができません。そのため、設計段階から外部の振動や配管応力の影響を効果的に抑制するための工夫が必要となります。
Endress+Hauserでは、高い固有振動数と独自のTorsion Mode Balancing(TMB)システムを組み合わせることで、この課題を解決しています。Proline Promass Iの単一測定管センサでは、測定管に偏心配置された振り子質量を逆位相で振動させることにより(ねじり運動)、高精度な測定に必要なシステムバランスを実現しています(図5)。 この内蔵されたバランス機構により、Promass Iは2測定管方式と同様に容易な設置が可能です。流量計の上流側や下流側に、特別な防振サポートや固定具を設置する必要はありません。
さらに、Promass Iでは質量流量、密度、温度に加え、粘度をインラインで測定できるため、追加のプロセス変数として活用できます。
©Endress+Hauser
図5:Proline Promass IのTorsion Mode Balancing(TMB)システムによる優れた耐振動性能。 この単一測定管方式の流量計は、追加の支持構造や固定具を必要としません。
ω = 角速度 m1 = 測定管および流体の質量 m2 = 振り子質量 v1 = m1 の速度 v2 = m2 の速度 p = 運動量
4測定管方式は、2測定管方式と同様に逆位相振動を採用しており、流量計を設置環境から効果的に切り離すことができます。これにより、外部振動や配管からの影響を低減し、安定した測定を実現します。 さらに、同等口径の2測定管方式と比較して、より広い流量レンジに対応できるほか、高い流量処理能力と低い圧力損失を実現できるという特長があります。 こうした特性により、4測定管方式は特にパイプライン輸送や積み込み・荷揚げなどの大流量アプリケーションに適しています。
実際のアプリケーションにおけるコリオリ質量流量測定
コリオリ質量流量測定のメリットは明確です。この測定原理は、導電率、圧力、温度、密度、粘度などの物理的特性の影響を受けません。また、上流側および下流側の直管長を必要としないため、設置スペースが限られている場合にも大きな利点となります。そのため、コリオリ流量計は化学や製薬分野をはじめ、さまざまな産業分野で幅広く使用されています。
コリオリ流量計は、洗剤、溶剤、灯油や各種燃料、植物油、動物性油脂、ラテックス、シリコーンオイル、トルエン、ベンゼン、アルコール、メタン、果汁、歯磨き剤、食用油、酢、ケチャップ、マヨネーズをはじめ、各種ガスや液化ガス(ブタン、プロパン、天然ガスなど)まで、ほぼあらゆる流体の測定に対応できます。
コリオリ流量計は、質量流量と流体密度を同時に測定できるほか、温度センサにより流体温度も監視できます。そのため、この測定方式はまさに「多変数計測(Multivariable Metering)」と呼ぶことができます。質量流量、流体密度および温度という主要な測定値を用いて、体積流量、固形分含有量、濃度、さらには換算密度(標準密度、°Brix、°Baumé、°API、°Balling、°Platoなど)といったさまざまなプロセス変数を演算・表示することが可能です。最新の計測システムでは、これらの二次変数を変換器(トランスミッタ)内で直接演算し、出力することができます。
コリオリ流量計は優れた特長を備えており、以下のような幅広いアプリケーションに適しています。
各種原料の混合およびバッチ処理 プロセス制御 密度が大きく変化する流体の測定 製品品質の管理および監視 液体および気体の計量取引(Custody Transfer) これらは、コリオリ測定原理が過去25年間にわたり、実績ある測定技術として広く確立されてきた理由の一部です。コリオリ流量計が化学プロセスで広く採用されている主な理由は次のとおりです。
質量流量を高精度(一般的に±0.1 %)で直接測定できる 幅広い測定管材質を選択できるため、多様なアプリケーションに柔軟に対応できる コリオリ流量計は食品業界でも広く使用されており、例えば微量原料の定量供給や充填工程などに適用されています(図6)。また、圧縮天然ガス(CNG)をはじめとする低圧・高圧ガスの流量測定分野でも、コリオリ流量計の採用が拡大しています(図7)。さらに、さまざまな用途向けに、計量取引に対応した流量計も提供されています。
©Endress+Hauser
図6:Endress+HauserのDosimass による充填および定量供給。Dosimassは、さまざまな流体を扱うバッチプロセスで使用できます。
前述した数々のメリットにより、コリオリ測定原理を採用した流量計は新たなアプリケーション分野へと着実に適用範囲を広げてきました。そのため、コリオリ流量計市場は今後も現在の成長を維持し、さらなる拡大を続けることが期待されています。
コリオリ測定の特長は、これまで従来の流量測定技術が担ってきたアプリケーションにおいても、非常に魅力的で将来性のある選択肢となっています。その評価において重要な要素の一つが総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)です。これには初期導入費用だけでなく、機器のライフサイクル全体を通じて発生する運用費用や保守費用も含まれます。コリオリ流量計は、メンテナンスの必要性が比較的少なく、さらに幅広いプロセス条件に柔軟に対応できるため、ライフサイクルコストを低く抑えることができます。
©Endress+Hauser
図7:Endress+HauserのPromass Qセンサ2台による危険場所でのエチレン流量測定
図7に示すアプリケーションでは、75~95 barの圧力および10~40 t/hの流量範囲でエチレンを測定しています。配管振動が存在する条件下でも、Promass流量計には追加の支持構造や固定具は不要です。
液体およびガスの流量測定に幅広く適用可能 質量流量を直接測定(圧力・温度補正が不要) 測定原理が流体の密度や粘度の影響を受けない 高い測定精度(一般的に±0.1 %) 質量流量、密度、温度を同時に測定できる多変数センサコンセプト 流速分布の影響を受けない 上流側および下流側の直管長が不要 測定管内に可動部がない フィルタが不要 密度計を別途設置する必要がない
初期導入コストが比較的高い 多くの構造では圧力損失が発生する 流体中のガス含有量が高い場合や、多相流体には適さない場合がある
コリオリ質量流量計を設置する際の注意点は何ですか?
コリオリ測定原理そのものは、設置方法や機器の取り付け方向に関して特別な要件を課すものではありません。ただし、機械的な設置については、メーカーが定める設置要件に従うことが重要です。これらの要件はメーカーによって異なるだけでなく、同一メーカーであっても機種や構造によって異なる場合があります。一般的に、Endress+Hauserのコリオリ流量計は、配管への設置に際して特別な対策を必要としません。ただし、構造によっては振動の影響を受けやすく、配管の2か所で機械的に固定する必要がある機種もあります。このような構造上の違いにより、設置コストが大幅に増加する場合があります。
流体中にガスが含まれている場合、測定にはどのような影響がありますか?
特に高粘度液体には、気泡としてガスが含まれていることがよくあります。これらの気泡は測定管の振動を減衰させる作用があります。この影響に対しては、励振エネルギーを増加させることで振動の減衰を補償し、測定への影響を低減できます。さらに、Endress+Hauserの一部の流量計(Promass Q)には、MFT(Multi-Frequency Technology:マルチ周波数テクノロジー)が搭載されています。この技術では、測定管を複数の周波数で振動させることで、高粘度流体中に分散した微細な気泡によって生じる測定誤差を能動的に補正します。
一方で、大きなガス溜まりや多量のガス混入は、より大きな影響を及ぼします。これらが流量計を通過すると、振動系の安定性が損なわれ、測定精度が低下する場合があります。極端な場合には、測定管の振動が停止することもあります。そのため、可能な限りガスの発生を防止することが重要です。対策としては、プロセス圧力を高めることや、ガスセパレータを設置することが有効です。また、Endress+HauserのGas Fraction Handlerをはじめとする先進的な信号処理技術やソフトウェア機能を活用することで、気液二相流条件においても優れた測定安定性を実現できます。
浮遊固形物は測定にどのような影響を与えますか?
固形物が流体中に均一に分散している限り、測定上の問題はありません。固形物は液体と同様に振動し、その結果、流量信号の一部として検出されます。重要な要素となるのは、粒子径(慣性)と粘性力(加速力)の比です。そのため、低粘度流体では固形物の含有率をできるだけ低く抑えることが望まれます。 わずかに湾曲した測定管を採用した流量計は、特に流体が流れていない状態において、固形物が測定管の湾曲部に堆積するのを防ぐように設置することができます。例えば、垂直に設置することで固形物の堆積を抑制できます。
配管内に背圧がない状態での測定はどうなりますか?
流体のキャビテーションを防ぐためには、十分な背圧を維持する必要があります。キャビテーションは、流体で満たされたシステム内の圧力が、その流体の蒸気圧を下回った場合に発生します。Endress+Hauserの選定・設定ソフトウェア「Applicator」には、特定のプロセス条件下でキャビテーションが発生する可能性を判定する機能が搭載されています。キャビテーションの発生が予想される場合には、Applicatorが直ちに警告を表示します。
配管が満管でない場合はどうなりますか?
配管が部分的にしか満たされていない場合、流量を測定することはできません。このような状態では、測定管の振動によって構成される振動系が安定した状態を維持できないためです。
流速分布が変化するとどうなりますか?
コリオリ流量計では、流速分布の変化は測定に影響しません。コリオリ流量計は質量流量を直接測定するため、流速分布の影響を受けないという特長があります。
ピストンポンプは測定にどのような影響を与えますか?
ピストンポンプは、流量の大きな周期的変動を発生させる場合があります。また、デッドボリュームやバルブのわずかな漏れ、あるいは容積変化によって、わずかな逆流が生じることもあります。 このようなプロセス条件では、正方向および逆方向の流量変化に対して迅速に応答できる双方向測定対応の計測システムが必要となります。Endress+Hauserのコリオリ質量流量計は、測定レンジ全域にわたってこのような流量変動を補正する機能を備えており、脈動流に対しても正確な測定を実現します。 さらに、ピストンポンプは、気泡を含む液体などの圧縮性流体において、密度の周期的な変動を引き起こします。このような条件下では正確な測定が難しくなる場合がありますが、システムの静圧を高める、あるいはエキスパンダを設置することで改善できます。
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