得れば得るほど、さらに欲しくなる
少し前までは、ファイルの保存先はパーソナルコンピュータのハードディスク、リムーバブルストレージ、またはネットワークサーバーに限られていました。2000年代に入ると新たな仕組みが登場しました。データセンター内で多数のサーバーをネットワーク接続することで、インターネット経由で膨大なデータを保存できるようになったのです。クラウドの登場により、個人でも、多数のユーザーと同時でも、いつでも、どこからでもドキュメントやプログラム、さらには人工知能にアクセスできるという大きな利点がもたらされました。しかし、このクラウドには暗い側面もあります。それは、際限なくエネルギーを消費し続ける点です。International Energy Agency(IEA)は、2030年までにデータセンターの電力消費がさらに倍増し、日本の現在の総電力消費量をやや上回る規模になると予測しています。[訳注:原文では「エネルギー消費量」で比較していますが、IEAのレポートでは、"Data centre electricity consumption is set to more than double to around 945 TWh by 2030. This is slightly more than Japan’s total electricity consumption today."と「消費電力」で比較しており、こちらの比較が正確です。https://www.iea.org/reports/energy-and-ai/executive-summary
さらに正確には、「年間」電力消費量の比較です。]
ムーアの法則は終わるのか?
それは当時、突飛とも思える理論でした。1965年、Gordon Moore氏は、集積回路に搭載できる素子数が毎年倍増すると予測しました。そして、その予測は的中しました。その後数十年にわたり、技術の進歩によりコンピュータチップはますます小型化しながら、より高性能になってきました。そして、この予測は確固たる定説として受け入れられるようになりましたが、チップメーカーIntelの共同創業者であるMoore氏自身も、後に倍増の期間を毎年から2年ごとに修正しています。現在に至っては、集積回路に搭載する素子数をこれ以上増やす余地はほとんど残されていません。最新のチップは原子数個分の幅という極めて微細な構造で設計されており、ムーアの法則は物理的な限界に近づいています。そのため業界では、量子コンピューティングなどの新たなアプローチの研究が進められています。新たなモデルとして「More than Moore」、すなわち異種技術の融合という考え方が広がっています。
標準化がもたらす変革
標準への適合が急進的な変化を加速させるのでしょうか。一見すると矛盾しているように思えますが、デジタル化においては、こうしたことが実際に起こることは少なくありません。その代表例がMP3形式です。1990年代に開発されたこのファイル形式により、顕著な音質劣化なしで音声ファイルのサイズを大幅に削減できるようになりました。この音声圧縮標準によって、利用者は手持ちのあらゆる機器で音楽を再生できるようになりました。MP3形式の音楽ファイルは、当初はコンピュータで、その後はiPod、そして現在ではスマートフォンで広く再生されるようになりました。このように、音楽の消費行動を一変させるとともに、数十億ドル規模の音楽産業の従来の基盤を覆しました。
忘れられない体験
2000年当時のAmazonのウェブサイトや、1990年代後半のendress.comがどのようなものだったか、気になったことはありませんか?それなら、Wayback Machineで過去へ旅してみてください。Wayback Machineは、1996年以降インターネットを巡回し、ウェブサイトのスナップショットを収集してきたプラットフォームで、最近ではその数は9,460億件にのぼります。懐かしい思い出を楽しんでください。ただしご注意を。昔の写真を見ると、少しショックを受けるかもしれません。