1年前、私は2人の友人をクルーに迎え、ヨットで大西洋を横断するという生涯の夢を実現しました。ドイツのバルト海沿岸にあるKappelnを出発し、モロッコとカナリア諸島を経由してカリブ海まで、実に11,000 kmの航海です!私は、3ヶ月の航海を通して、自然がどれほど壮大でかけがえのないものかを、これまでにないほど強く実感しました。そして、Endress+Hauser SICKで海事産業を担当する管理者としての仕事は、単なる職業ではなく天職なのだということにも気付きました。海事産業は、効率を高め、環境負荷を低減しなければなりません。この目標の実現に近づくための革新的なソリューション開発を推進することが、私の仕事です。
海運業界を対象とする規制は、すでに大幅に強化されています。2020年には、全世界に適用される船舶用燃料の硫黄分上限規制が導入されました。また、EUでは2024年以降、船舶にCO2排出量に応じた費用負担を求める規則が施行されています。世界的な規制の整備も進められており、国際海事機関(IMO)は、2050年までに世界の海運業界全体で温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを義務付けています。顧客と投資家は長年にわたり、業界の環境フットプリントに関する透明性を求めてきたため、排出量を正確に測定し、迅速に削減することがますます重要になっています。
現在、船舶からのCO2などの排出量は、燃料消費データを基に手作業で算出するのが一般的です。多くの場合、燃料消費データには燃料油供給証明書(BDN)の記載値がそのまま使用されますが、乗組員が検尺テープで燃料タンクの液位を測定することも珍しくありません。その後、海運会社の担当者が数値を確認し、関係先に提出します。このプロセスは手間がかかり、人的ミスも生じやすいため、Endress+Hauser SICKのチームでは、私のアイデアを基に自動化を進めています。現在開発しているのは、排出量を直接測定し、検証して報告するシステムです。排気筒内に設置した革新的なセンサを使用して、CO2など各種排出物質の排出量をリアルタイムで連続測定します。そのデータをクラウドサーバーに転送し、規制に基づく検証を経た上で、関係先に安全に送信します。
このシステムが実現すれば、海運会社の作業負担を大幅に軽減し、規制要件に関する不安を解消できます。また、高精度な測定により、これらの企業は自社船舶の排出状況を正確に把握できるため、燃料消費量を削減し、それに伴って排出量も削減できます。このシステムの実現に向けて、Endress+Hauser SICKは、ドイツ政府の助成を受けた研究プロジェクトを通じて、フラウンホーファー研究所傘下の2つの研究所、コンテナ海運会社、Port of Hamburg、船舶管理会社Flotte Hamburg、国際船級協会と共同で取り組んでいます。
「私は、海運業界が脱炭素化という課題を乗り越えられると確信しています。そもそも海運業界は、世界規模で力を結集することに慣れています。気候変動対策を効果的に進めることは、いわば大西洋横断航海のようなものです。全員がそれぞれの役割を果たし、冷静さを保ちながら、足並みをそろえて取り組む必要があります。力を合わせることで初めて、成功へ向けて帆を張り、大きな成果を成し遂げることができます。」
海と船への情熱を原動力に
Hinrich Brumm(56歳)は、大きな港を擁し、遠い土地への憧れが常に身近に感じられるHamburgで育ちました。そのため、環境工学とプロセス工学を学ぶ中で、船舶から排出されるCO2や大気汚染物質の量をどのように測定し、削減するかという課題に関心を抱くようになったのは自然なことでした。Endress+Hauser SICKの海事産業担当マネージャーに就任する前は、国際船級協会DNV GLに15年間勤務し、クリーンな海運の推進に尽力しました。余暇には、建造から43年を経た全長36フィートのHallberg-Rassy社製352型艇でセーリングを楽しんでいます。