世界の経済や労働環境は変化を続けています。プロセス産業もまた大きな変革を遂げつつあります。技術の飛躍的進歩、人口動態の変化、気候変動は、意思決定者が直面している課題のほんの一部に過ぎません。「変化するか、変化に飲み込まれるかです」と語るのは、英国の未来学者Nikolas Badminton氏です。彼はBaselで開催されたEndress+Hauser Global Forum 2026で講演した5人の著名な思想的リーダーのひとりです。Inspring Sessionでは、企業がこの混乱を切り抜け、さらにはそれを強みに変えるためのアイデアや戦略が提言され、講演者たちはステージを降りてからも、互いの視点を共有するために時間を割いてインタビューに応えました。
2026 Inspiring Sessionの重要なポイント – 5人の講演者のインタビュー動画:
Goutam Challagalla氏、IMD Business Schoolの戦略・マーケティング担当教授
持続可能性と収益性は決して相反するものではありません。むしろその逆です。IMD Business Schoolの戦略・マーケティング担当教授Goutam Challagalla氏は、持続可能な製品には極めて大きな成功をもたらす可能性があると語ります。これは特に、製造に使用する材料を減らしながらも高性能や低価格といった従来の顧客価値も提供できる製品に言えることで、資源の節約のみならずコスト削減にもつながるウィンウィンの関係です。
Nikolas Badminton氏、未来学者
どうすれば未来を垣間見ることができるでしょう?英国の未来学者Nikolas Badminton氏は、想像力を育む土壌を受け入れ、「もし...なら?」と定期的に自問することを助言します。もしCEOが人間だけでなくAIも「指導」しなければならなくなったらどうなるだろう?もし中国が世界の主要な経済大国になったらどうなるだろう?10の巨大都市のうち8がサハラ以南のアフリカに出現するとしたらどうなるだろう?といった風に。未来戦略家でもあるBadminton氏は、主に循環型経済とその途轍もない可能性に注目し、「循環型経済は経済全体に良い効果をもたらします」と述べます。彼にとってこの方向性は必然であり、「20年後には、もはや『循環型経済』という言葉自体を使わなくなっているでしょう。ただ『経済』について話しているだけになるはずです」と述べています。
Jennifer Zhu Scott氏、AI投資家・起業家
AI投資家で起業家でもあるJennifer Zhu Scott氏は、人工知能の開発が急ペースで進行していると強調します。かつてこれほどAIアプリケーションの開発、統合、導入が容易になったことはありません。たった一人で、コンセプトの策定から導入まで、ビジネスモデル全体を迅速かつ低コスト、高度な自動化を伴って実現できるようになっています。人間の経験知は「第2の脳」のように蓄積、共有できるようになり、経済や社会そのものを根本から変える可能性があります。その一方で、AI経済が直面する大きな課題である演算能力、エネルギー需要、そしてそれらに関連する持続可能なソリューションにも取り組む必要があります。ただし、Jennifer Zhu Scott氏はAGI(artificial general intelligence:汎用人工知能)、すなわち人間と同じように柔軟に考え、学び、さらにそれを適用することができるAIは「人間中心のファンタジー」であると考えています。彼女の考えでは、「私たちが今まさに発見しようとしているのは、人間の知能は数ある知能のうちのひとつに過ぎないということだからです。」
Dr Katharina Hermann、人事のエキスパート
人事のエキスパートであるDr Katharina Hermannは、現代を「近代史において世界の労働者に最も重大な変化が起きた」時代としています。人口動態の変化、技術の飛躍的進歩、生産性向上のプレッシャーによって企業の従業員は根本的な変化を遂げつつあります。近い将来、その国籍、年齢、経歴はこれまで以上に多様化する可能性が高くなっています。「今後10年、産業界をリードするのはリスキリング、インクルージョン、リーダーシップに投資する企業になるでしょう」と、2025年までHubert Burda Mediaの取締役会メンバーを務めたDr Hermannはそう語ります。
Jonathan Brill氏、未来学者
未来学者のJonathan Brill氏にとって、変化の激しい時代は必ずひとつの事、すなわちチャンスをもたらす時代でもあります。彼は、多くの事例をもとに、新たな視点から企業が危機に際していかに成長し、新しい市場を生み出したかを示します。鍵となるのは、あらゆるシナリオを予測しようとすることではなく、危機や大変動の直接的な結果、言い換えれば次の開発対象となりうるものを考えることです。Brill氏はこれを「次に倒れるドミノは何か?」という言葉で表現しています。この考え方が有効なのは、多くの混乱が、サプライチェーンの寸断のように、非常によく似た結果を引き起こすからです。こうした状況において戦略的イノベーションは、自社ビジネスを柔軟に再構築するために必要な柔軟性をもたらします。