外から見ると巨大な倉庫のようですが、その内部には、積み重ねられた木箱ではなく、高性能サーバーが何列にもわたって整然と並んでいます。AIやクラウドサービスを支える膨大な演算能力への需要に対応するため、現在、世界各地でデータセンターの建設が急速に進んでいます。Meta、Amazon、Apple、Google、Microsoftをはじめとする米国のテクノロジー企業やその他の企業は、インフラ整備に総額数千億ドル規模を投じています。その一例が、米国ルイジアナ州で建設が進められているMetaのデータセンター施設です。その敷地面積は、サッカー場約70面分に相当します。
データセンターの演算能力が向上するにつれ、直面する課題も大きくなっています。高負荷時には、PCのファンが回転数を上げ、より多くの冷却用の空気を送り込むことで動作音が大きくなることは、多くの人が経験しているでしょう。しかし、高性能なGPU(Graphics Processing Unit)は、一般的なデスクトップパソコンやノートパソコンに搭載されているCPUよりも10倍以上の電力を消費します。さらに、最大10万台のGPUが限られたスペースに高密度で設置されると、温度が上昇し、それに伴って冷却の重要性も高まります。
データセンターでは、冷却に要するエネルギーが消費電力全体の最大40%を占める場合があります。より持続可能なソリューションを求め、多くの事業者は現在、空冷方式に代わり、エネルギー効率に優れた液冷方式の導入を進めています。この方式では、プロセッサから熱を直接吸収し、中央の熱交換器を介して放熱します。「私たちは、この先進技術の開発に当初から携わってきました。現在、Endress+Hauserは、米国におけるAI革命を支える産業用計装機器の主要サプライヤーとなっています」と、Endress+Hauser USAで半導体・データセンター事業開発責任者を務めるLiza Kelsoは述べています。
未知の領域
数年前、データセンターで液冷方式の導入が始まった当時は、市販のソリューションはまだ存在していませんでした。そこでEndress+Hauserは、プラントエンジニアやインテグレータと連携し、最適な計装機器の選定や仕様策定、システムへの組込みを進めました。最新のデータセンターでは、冷却システムは、相互に接続されたモジュール式プロセススキッドを収容する中央ユーティリティ棟(CUB)で運用されています。各CUBには、大型チラー、熱交換器、制御盤などの設備が設置され、リアルタイムのデータを活用してサーバーを最適な温度に維持しています。1つのCUBだけでも、流量、温度、圧力、水質を監視するために数十台の計装機器が使用されています。1つのデータセンターには通常4基以上のスキッドが組み合わされるため、施設全体では数千台もの計装機器が連携して稼働することになります。
「高精度なプロセス測定により、冷却システムの性能を最適化できるだけでなく、資源を効率的かつ持続可能な方法で活用できます」と、Kelsoは述べています。プロバイダーにとっては、エネルギー消費量や水使用量の削減に加え、システムの信頼性を確保することも最優先事項です。過熱によるデータセンターのダウンタイムは、1分あたり約15万ドルの損失につながる可能性があります。そのため、事業者はPUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)にもますます注目しています。これは、データセンター全体の消費電力をITインフラの消費電力で割って算出される指標です。PUEが理想値の1.0に近いほど、データセンターのエネルギー効率は高く、供給されたエネルギーのほぼすべてが演算に使われていることを意味します。欧州では、2026年7月以降、新設されるデータセンターのPUEは1.2を超えてはならないとされています。
年間生産能力を5倍に増強
Endress+Hauserは、流量、液体分析、レベル、温度の各分野における幅広い計装機器のラインナップだけでなく、迅速な対応とお客様重視の姿勢によっても、システムプロバイダーや施設運営事業者から高い評価を得ています。データセンターの建設では、一日一日が重要だからです。「最初の大型案件では、ある計装機器について通常の年間生産量の5倍に相当する数量を納入する必要がありました。そのため、担当のプロダクトセンターは直ちに生産能力を増強しました」とKelsoは振り返ります。Kelsoは、Endress+Hauserの豊富な専門知識を活かし、AIデータセンターが持続可能な成長に向けたさまざまな課題を克服できるよう支援できると確信しています。「今後、データセンターでは再生可能エネルギーを含むさまざまなエネルギー源を活用し、敷地内で自家発電を行うケースが増えていくでしょう。また、周辺地域からの排水を処理するなどして、水使用量もさらに削減されていくでしょう。こうした取り組みにおいても、Endress+Hauserは計装技術と豊富なアプリケーションノウハウを活かして支援できます。」
高まる熱需要
デジタル化やクラウドサービス、AIの普及を背景に、データセンターは世界各地で大規模化が進んでいます。国際エネルギー機関(IEA)によると、2024年だけでも、世界で5,000億米ドルを超える投資が行われました。IEAは、今後5年間でデータセンターの年間電力消費量が約945テラワット時に達し、現在の約2倍になると予測しています。これは、日本の年間電力消費量に匹敵する規模です。現在の大規模AIデータセンターでは、平均して約10万世帯分の電力が消費されています。今後建設される施設では、最大50倍もの電力を消費する可能性があります。そのため、事業者には、持続可能な発電の実現とエネルギー効率の向上に向けた取り組みが求められています。