時間(と収率)が無駄になるUF/DFの工程
限外ろ過/透析ろ過(UF/DF:Ultrafiltration/diafiltration)はダウンストリームプロセスで最もダイナミックな工程のひとつです。これは通常、クロマトグラフィ法による精製後、最終製剤化と最終充填の直前に実行されるため、原薬が最終的に決定する前の濃度、標準液の組成、凝集リスクを修正する最後の機会となります。
タンパク質の濃度、標準液の組成、凝集傾向が急激に変化する可能性はありますが、ほとんどのプロセス監視およびプロセス制御の戦略は未だに遅延が生じる抽出分析に依存しています。UF/DFではタンパク質が局所的な高濃度、せん断力、急速な標準液の交換にさらされ、これらはすべて材料値が最も高い工程の凝集リスクを高めます。
アップストリームプロセスが強化されると、ダウンストリーム精製の領域は狭くなります。オフラインの結果を待つことは以下を意味します。
- 収率が既に低下した後で凝集の問題が検知される
- 必要もないのにUF/DFの実行が一時的に停止される
- 是正措置を講じるのが遅すぎて効果が得られない
その結果、ダウンストリームのワークフローが細分化されてサイクル時間が長くなり、製品品質低下のリスクが高まります。UF/DFはダウンストリームプロセスの後半で行われるため、完了後に凝集が検知された場合、単純なパラメータ調整でなく、不可逆的な収率低下、作業のやり直し、バッチの廃棄を招くことが多いです。
システムの状態だけでなく、精製の状態を見る
従来のUF/DFのリアルタイム測定では、凝集の進行度合や標準液の交換が本当に完了しているかどうかはわかりません。これは、リアルタイムでなくオフライン分析でしか把握できません。ラマン分光法によるインライン分析は、プロセス分析技術(PAT)の一種で、UF/DFの流路に統合され、精製プロセスに継続的な非抽出データを提供します。
圧力、流量、体積だけでプロセスの状態を推定するのではなく、以下のデータが直接視覚化されます。
- UFにおけるタンパク質の濃度変化および最終濃度
- 透析ろ過中の標準液の交換の進捗
- 凝集挙動に関連するスペクトラルシグネチャ
製品品質の特性はUF/DFの水理学的安定性に関係なく変化するため、この違いは重要です。
ダウンストリーム速度に合わせた分析
ラマン分光法による監視は、ダウンストリーム精製パス専用に設計された流量に基づくラマン分光アセンブリを利用して行います。
この設定は以下に対応しています。
- 小容量、低濁度のUF/DFストリーム
- 再利用可能またはディスポーザブルのフローセルを使用した滅菌操作
- cGMP製造が予定されている開発環境への統合
分析機能を流路に直接組み込むことによって、最新のダウンストリームプロセス(DSP)の速度および容量に関する制約にも適合するシステムになります。
凝集が損失につながる前に介入
UF/DFでダウンストリームに関する情報が得られれば、意思決定をより早い段階で行えるようになります。インラインで凝集に関連するスペクトルのトレンドが生じても、問題の発見に時間がかかるサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)のようなオフラインの分析手法と違って、チームは濃縮率の調整、透析ろ過の標準液交換の変更、最終的な濃縮前のプロセス停止といった対策を講じる余裕を持てます。
多成分分析のプロセス情報をリアルタイムに提供できる汎用性の高いPATを導入することで、チームはプロセス後の確認を待つことなく状況を把握できるようになりました。これにより以下が可能です。
- UF/DFの再開が可能な状態で早期に凝集の傾向を検知し、収率や品質に不可逆的な影響が及ぶ前にそれを軽減できるようにする
- プロセスの実行中に動作条件を調整する
- 不必要なプロセスの中断を回避する
- 作業のやり直しを減らして繰り返し実行することで開発サイクルを短縮する
UF/DFのインライン監視によって改善できること
UF/DFにインラインラマン分光法を利用すると、具体的には以下のようにダウンストリームが改善されます。
- 分析の待ち時間回避によるUF/DFサイクル時間の短縮
- 早期の凝集検知による製品ロスの低減
- バイオシミラー製造全体におけるバッチの一貫性の向上
- 手動介入の低減およびプロセス後の調整の低減
- PAT対応プロセスの知識によるDSP開発の迅速化
収率の向上に加え、凝集を早期に可視化することで、バイオ医薬品の凝集レベルの影響を直接受ける原薬の有効性、薬物動態、免疫原性リスク、規制への適合性の向上が期待できます。これらの利点が全体的に組み合わさって、製品コストの削減、市場投入までの時間短縮につながります。
AlvotechにおけるUF/DFのリアルタイム監視
Alvotechは、ダウンストリームの開発研究において、UF/DFのタンパク質精製のリアルタイム監視にインラインラマン分光法を取り入れました。その目的は、プロセスの観察だけでなく、UF/DFの凝集リスクを早期に検知することで、ダウンストリームでのリアルタイムの意思決定に効果があるかどうかを判断することでした。
これにより、以下のようなリアルタイムの意思決定が可能になりました。
- 濃度変化およびその他のプロセスパラメータのリアルタイム追跡
- 凝集に関するスペクトルの挙動の検出
- インラインラマン分光法と既存の分析基準を組み合わせた予測モデルの開発
分析結果に加え、この導入により、インラインラマン分光法でダウンストリームの開発ダイナミクスを再構築する方法が実証されました。これにより、細分化が軽減され、精製に関してより迅速かつ信頼性の高い意思決定が可能になり、製品品質も保証されます。
Endress+Hauserが選ばれる理由
Endress+Hauserは、プロセス関連の知識からモデル開発、導入までダウンストリーム・PATチームをサポートし、ラマン分光法がもたらす機能をUF/DFワークフローに取り入れるかどうかの意思決定を支援します。
計装機器だけではなく、バイオ医薬品の製造における早期介入、より高い収率の確保、より復元力のあるダウンストリームプロセスの実現にも重点を置きます。
ダウンストリーム操作にリアルタイムの情報を取り入れる
このeBookでは、ラマンフローアセンブリでダウンストリームプロセスのフロー内で直接インラインのリアルタイム測定を行う方法について説明します。濃度と組成の継続的な監視で、遅延が生じるオフライン分析だけに頼ることなく、早期の状態把握、より信頼性の高い意思決定、ダウンストリーム単位操作全体の制御の改善をいかにサポートできるかをご紹介します。
以下についてご紹介します。
- インラインラマン測定によって付加価値がもたらされるダウンストリームプロセスの工程
- 濃度および組成のリアルタイムの傾向を把握することによる意思決定のタイミングの改善
- 微量のフロースルー測定が開発およびスケールアップのワークフローに適する理由
- 分析の遅延を減らし、プロセスに関する知識と堅牢性を向上させる方法