熱式流量計の測定原理
熱式質量流量計の原理、利点および制限を学びましょう。
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複数の業界
03.12.2024
要約
熱式質量流量計は、熱伝達効果を利用して流体の流量を特定します。 熱式質量流量計には、熱量測定原理に基づくものと、熱拡散原理に基づくものがあります。 熱式流量測定に使用される方式には、熱線風速計のほか、バイパス型/インライン型/挿入型の流量計があり、それぞれ感度と設置の複雑さにトレードオフの関係があります。
熱式質量流量計 は、流量計の明確な分類として、主に次の2種類に分けることができます。
「熱拡散」(別名:風速測定)原理(図1): 加熱素子を流路内で流体に接するように配置します。冷却速度は、局所的な比質量速度、つまり流量の尺度になります。
「熱量測定」原理(図2): 流れの中の限られた領域に熱を加えます。局所的な温度上昇と加えられたエネルギーを使用して、質量流量を計算します。
いずれのタイプも市場で購入できます。高感度になるように設計された流量計の中には、研究用途で広く使用されているものもあります。高感度の流量計では、測定値が熱伝導率や比熱容量などの流体特性、混合ガスの場合はガス組成、さらに設置条件の影響を受けやすくなります。
熱の測定原理は、質量流量を高精度に測定できるため、さまざまなアプリケーションで広く使用されています。
熱拡散式流量計は、1)定電力方式、2)定温度差方式のいずれかの方法で動作します。
定電力方式では、電子部がいわゆる「速度センサ(通常は測温抵抗体(RTD)を用いた加熱センサ素子)に一定の電流を流します。別のRTDを使用して、流体温度を測定します。流量が変化すると、温度差(速度センサと流体温度センサの測定温度の差)が変化します。
定温度差方式では、電子部が速度センサと流体温度センサの間の温度差を一定に保ちます。流量が変化すると、一定の温度差を維持するために、加熱されている速度センサに供給する電力を調整する必要があります。いずれの方法でも、測定された変化(供給電力または温度差)は、流量の変化に正比例します。どちらの設計でも、流量と速度センサからの熱伝達の関係はキングの式(またはその派生式)で表されます。
QL :速度センサの熱流量 ΔT:速度センサと流体の温度差 K:流体の熱伝導率 cv :定積比熱容量 ρ:流体密度 v:流速 d:加熱されている速度センサの直径
この式の形から、測定値が流体特性の影響を受けやすいことと、流量が増加するにつれて第2項の寄与が大きくなることがわかります。この式は非線形ですが、デジタル信号処理技術によって容易にリニアライゼーションできます。一部の設計では1本の加熱ワイヤを使用し(ここでは風速計が典型的なタイプです)、その他の設計では2つのサーミスタをリファレンスモードとセンシングモードで使用します。図1は、このような熱式プローブを示しています。流体が加熱されていない流体センサ(a)と、加熱されている速度センサ(b)に接しながら流れることで、熱流量が測定されます。
©Endress+Hauser
図1:熱拡散式質量流量計の熱式プローブ。 a=加熱されていないセンサ素子、b=加熱されているリファレンス素子
図2は、複数の市販されている熱式流量計の設計に採用されている「熱量測定」原理を示しています。流量計の内部で熱を発生し、流体を加熱します。また、内部に2つのセンシング素子が配置されており、異なる位置の間で温度変化を測定します。熱プロファイルをより詳細に把握するために、2つのヒーターと3つの温度センサが使用されることもあります。流れがない場合、すべての温度センサは同じ温度を示します。
流れが発生すると、センサ間に相対的な加熱または冷却が生じ、流量に直接比例する温度差ΔTが生じます。このタイプの流量計では、質量流量を次の式で求めます。
Qm :質量流量 H:熱入力 A:定数 cp :定圧比熱容量 ΔT:測定温度差
©Endress+Hauser
図2:「熱量測定」原理に基づく質量流量計。 H=加熱素子、L/2=パイプ長の半分、F=流量計、T=チューブ温度、T1,2 =センサ
流量ゼロで熱(H)を加えると、流れによる歪みのない熱プロファイルが生成され(a)、流れがある条件では、熱プロファイルが右方向に移動します(b)。
上記の式の定数「A」には熱伝導率と粘度が含まれますが、熱拡散式と比べると流体特性への依存度が低くなっています。
どちらの測定方式(「熱拡散」および「熱量測定」)でも、単一点センサまたは多点センサを使用した設計が、フルボア型またはバイパスライン型で開発されています。これにより、医療用途におけるクリーンガスの低流量から、排気塔の大容量フレアガスまで、非常に広い流量範囲に対応できます。
市販製品では、前述の2つの原理に基づいたセンサがメイン配管やバイパスループに使用されています。流量とパイプ寸法によっては、2つの動作原理は、メイン配管型とバイパス型のどちらの市販設計にも幅広く適用されます。最終的な設計選択では、アプリケーションと測定対象流体の特性が重要な決定要因となります。
最もシンプルな熱拡散式流量計は熱線風速計です。速度センサは、タングステン、白金またはニッケル製の細線です。定電力方式と定温度差方式の両方が市販されています。細線の直径は通常0.02 mmで、2つの支持部の間に張られています。これは非常に細いため、流れへの影響が最小限に抑えられ、感度と性能が維持されます。センサは、任意の向きで単一構成または複数構成にすることができます(図3)。より複雑な設計は、研究用途でよく使用されます。
©Endress+Hauser
図3:熱線風速計の各種設計。
一般にCTMF(キャピラリ式熱式質量流量計)として知られるバイパス型は、実際には熱量測定式流量計の一種です。多くの場合、バイパスキャピラリと組み合わせて層流素子(ラミナーフローエレメント)が使用されます。キャピラリチューブはラミナーサーマルマスフローエレメント(熱式質量測定用ラミナーフローエレメント)の上流側と下流側に接続され、主流の一部が分流されてサンプリングされます(図4)。この設計により、測定用キャピラリを通過するガス流量と総ガス流量の比率が一定に保たれます。ヒーターと温度センサは通常、主管ではなくキャピラリチューブに配置されます。ただし、キャピラリと層流素子を使用せず、センサを主管(パイプ)に直接配置する設計もあります。1つまたは2つのヒーターと、最大3つの温度センサをキャピラリに沿ってさまざまな方法で配置することができます。
©Endress+Hauser
図4:熱式質量流量計のバイパス型。 a=バイパスループ、b=加熱素子、c=層流素子、T1 ~T3 =温度センサ
一般に、CTMF流量計にはねじ込み継手が付属していますが、フランジ継手にも対応できます。この流量計の設計は、多くの場合、測定センサの下流に配置される質量流量測定コントローラと組み合わせて使用されます。この構成はマスフローコントローラ(MFC)と呼ばれます。通常、電子インターフェースはバイパスループと同じユニット内に配置されます。
大口径パイプでは、挿入型流量計が一般的に使用されます。ただし、一部の設計は呼び口径50 mm(2 inch)未満のパイプ径にも使用できます。センサは、流れるガス流に挿入されるプローブの先端に配置されます。総質量流量は、測定されたポイントでの流量、断面積、および流量プロファイルの温度補正から求められます。
通常は、センサをある程度物理的に保護する構造が含まれています。フランジ継手、パッキンググランド、サニタリ継手、超高純度継手など、さまざまな取付け構成を使用できます。最適な性能を得るには、パイプ断面内でのセンサ位置が非常に重要です。メーカー推奨の設置が実現できない場合は、測定値の補正が必要になります。
挿入型流量計の一部の設計では、最適な測定位置を容易に得るために、パイプ内のセンサ位置を調整できるようになっています。既設パイプへの挿入型流量計の設置は、通常、パイプ外面に溶接したアダプタを介して行います。挿入型流量計は、このアダプタを通してパイプ内に設置されます。アダプタの接続継手は、挿入プローブ側の継手と一致している必要があります。
一部のアプリケーションでは、複数の挿入プローブを使う設計が使用されます。一般的なアプリケーションのひとつとして、フレアスタックや粉塵などを含むプロセスガスの監視があります。一部の設計は、圧力ポートを熱式プローブに置き換えた多孔式ピトー管と非常によく似た外観になる場合があります。このような堅牢な設計では、定期的な引き抜きと掃除が必要になりますが、こうした厳しい条件のアプリケーションに対応する方法として実績があります。
インライン熱式質量流量計 (ITMF)は、本体、センシング素子、電子部の3つの要素で構成されます。電子部は、一次センサから離れた場所に配置される場合もあります。多くの最新機器と同様に、信号処理により、さまざまな流量出力とアラーム機能出力を必要な形式で使用できます。本体には、アプリケーションに合わせて幅広いプロセス接続(ANSI、DIN、NPTねじ、またはサニタリ)を使用できます。図5は、インライン型と挿入型流量計の構成の概略を示しています。
©Endress+Hauser
図5:Endress+Hauserの熱式質量流量計の設計。左:インライン型、右:挿入型。
熱式質量流量計は、流量計の中では、全般的に優れた特性を備えていますが、方式上の利点と欠点があります。これらの機器の一般的な性能範囲は、±1% o.r.~±3% o.r.、±0.3% o.f.s.と言えます。一般的なターンダウン比は100:1以上です。繰返し性は通常±0.5% o.r.程度、またはそれ以上です。流量2~10,000 kg/h(4.4~22,000 lb/h)以上に対応する設計があります。
熱式流量計は水分の影響を受けますか?
水分は、蒸気状態でも液体状態でも、熱式質量流量計に影響を与える可能性があります。水分が蒸気状態にとどまっている限り、その影響は相対湿度によって異なりますが、通常は比較的小さく、一般的には測定値がプラス方向にシフトします。t-mass 300/500などの一部の熱式質量流量計では、ソフトウェア設定で水蒸気をガス成分として追加できるため、水蒸気に対応できます。この場合、水蒸気による悪影響を補正できます。
ただし、ガスが飽和点に達して凝縮水が発生すると、影響はより大きくなる可能性があります。液体の水は熱伝達への影響が非常に大きいため、速度センサにおける対流熱伝達が影響を受け、測定誤差につながります。センサに形成された水滴は測定信号にスパイクを発生させる可能性があり、水分量が非常に多い環境でのアプリケーションでは測定を大きく乱すおそれがあります。Endress+Hauserは、凝縮水が発生するような湿度の高い環境での使用を避けるか、ヒートトレースの使用、配管の断熱、測定点上流へのノックアウトポットの設置など、凝縮水が発生しないように必要な対策を講じることを推奨します。その他にも、渦流量計や超音波流量計などの他の技術を検討することもできます。
混合ガスに使用する場合、熱式流量計は組成の変化による影響を受けますか?
はい。それぞれのガスには固有の熱特性があります。組成が変化すると、混合ガス全体の熱特性値も変化します。ただし、多くのガスでは、この変化は無視できる程度である場合もあります。各混合ガスについて、そのアプリケーションと期待する性能を踏まえた上で、評価する必要があります。
熱式流量計は設置条件の影響を受けますか?
はい、影響を受けます。その理由は、熱式質量原理が熱伝達に基づいているためです。熱伝達は、流れの中の1つの小さな点(速度センサのRTD)で発生するため、得られる質量速度はこの特定の点でのみ測定されます。ただし、質量流量を求めるには、この点での速度に測定点におけるパイプ内部の断面積を掛ける必要があります。そのため、算出される質量流量が正しくなるのは、測定点で測定された質量速度が、測定平面におけるパイプ内部の断面全体を代表した質量速度の平均値である場合に限られます。
そのための主な前提条件は、測定点で十分に発達した乱流の流速分布が形成されていることです。これを実現するには、測定点の上流側に規定の最小直管長を確保し、流れに入り込んで流速分布を乱す可能性のある上流側機器がないようにする必要があります。
こうした直管長の要件は通常、流量計メーカーによって定義され、上流側の乱れの原因(たとえば90°曲がり、配管径の変化、バルブなど)によって異なります。また、流量計の下流側にも一般に直管長の最低要件がありますが、上流側よりもはるかに短くなります。
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Endress+Hauserは、工業用ガス、圧縮空気および水系流体の直接質量測定に対応する包括的な製品ラインアップを提供しています。こちらをクリックすると、すべての熱式質量流量計をご覧いただけます。
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